「コーヒーの違いがわからない」のは当たり前! 違いを知るための3つの着眼点

「コーヒーの違いがわからない」のは当たり前! 違いを知るための3つの着眼点

COLUMN 2022.08.19

「違いがわかる男(人)の~」というコーヒーのCMを覚えている方も多いでしょう。

あのCMの印象が強いからか、コーヒーといえば味の違いを理解できるようになりたい飲み物の筆頭に挙げられますね。
また、コーヒーは違いがわかって一人前、のような固定観念を抱いてしまっている方も多いのではないでしょうか?

だからといって、「コーヒーの違いなんてわからないよ、どうしよう」なんて慌てる必要はありません。

私も昔は、「コーヒーなんて違い以前の問題。そもそも苦くて飲めない」と思っていた時期すらありました。
それが今ではすっかりコーヒーラバーに。
コーヒーの味の違いも、だんだんとわかるようになってきました。

コーヒーの違いを知るには、3つのポイントがあります。
(もっと深くまで掘り下げることもできますが、あまりにも専門的になってしまいますので、それはまたの機会に)

コーヒーが好きだから、ちょっとでも違いをわかるようになれたらいいな」と思っているあなたに、この記事を楽しんでいただけたらうれしいです。


前提として、まずはレギュラーコーヒーに挑戦してみよう

もしあなたが、普段インスタントコーヒーや缶コーヒーを飲んでいるのでしたら、この機会に挑戦していただきたいものがあります。

それはレギュラーコーヒーです。

ご存知の方には耳タコかもしれませんが、レギュラーコーヒーとは、コーヒー豆を挽いて抽出したコーヒーのことです。
代表的なのはドリップですが、他にも水出し・エスプレッソ・エアロプレス・フレンチプレスなどなど、たくさんの抽出方法があります。

インスタントコーヒーとレギュラーコーヒーの違いについてはこちらの記事でも解説しています。
⇒[コスパは?見分ける方法は?インスタントコーヒーとレギュラーコーヒーの違いを調べてみました!]

コーヒー

どうしてレギュラーコーヒーに挑戦する必要があるのでしょうか?

もちろん、インスタントコーヒーや缶コーヒーでも、メーカーや商品によって味の違いは感じられます。
・このコーヒーは苦みが深いな
・このコーヒーは酸味があるな
など。

けれど、こういった経験もないでしょうか?
「マイルドな味わいです」と商品説明には書かれていたけれど、あまりマイルドさを感じられなかった
「苦みの強い、目の覚めるような味です」という触れ込みだけれど、他社製品の方が苦みが強く感じられた

しょせん、商品説明は「当社比」な味わいの説明になりやすく、味の感じ方というものはその人その人の「主観」の世界です。

けれど、レギュラーコーヒーにははっきりと味わいの違いを感じ取りやすいポイントがいくつかあります。
だからコーヒーの違いがわかるようになるためには、レギュラーコーヒーに挑戦することが第一歩なのです。

レギュラーコーヒーというと、
・毎回豆を挽かなくてはならないの?
・ハンドドリップって時間がかかりそう
・上手に淹れられなかったら違い以前の問題になりそう
などなど心配なこともあるかもしれません。

上手に淹れられる自信がない方はまずは喫茶店やカフェからレギュラーコーヒーを知ってみても良いと思いますし、

・最初から挽いてある粉を買う
・コーヒーメーカーを使う
・ドリップバッグなど手軽な商品を使う

など、無理のない範囲から試してみても大丈夫です。

コーヒーの世界は奥深くて楽しいものです。
なので、無理をして辛くなっては欲しくないのです。

まずは自分が挑戦しやすい範囲から、レギュラーコーヒーに手を出してみましょう。


①コーヒーのわかりやすい違い:焙煎度の違い

コーヒー豆は、「コーヒーチェリー」というさくらんぼのような果実の種の部分です。
果実を取り除き、精製などの過程を経て最終的に焙煎され、私たちのよく知るコーヒー豆となります。

この最後の焙煎の段階で、
焙煎をする時間
焙煎の温度
などの違いにより、できあがるコーヒーの味わいが変わります。

コーヒーの浅煎り・中煎り・深煎り

大きく分けると
・浅煎り
・中煎り
・深煎り
という焙煎度の差になります。
焙煎が深くなればなるほど、コーヒー豆がよく焼けている、と覚えていただければまずは大丈夫です。

コーヒーの苦みは実は「焦げ」の苦みではないのですが、焙煎が深くなるほど苦くなります。

・浅煎り⇒酸味が強く、苦みが少ない
・中煎り⇒浅煎りと深煎りの中間
・深煎り⇒苦みが強く、酸味が少ない

コーヒーの焙煎度は、日本語では3段階ですが、さらに細かく焙煎度を分けて販売しているお店もあります。

コーヒーの8つの焙煎度

まずはレギュラーコーヒーの中から、焙煎度の違うコーヒーを買って飲み比べてみると、味の違いがはっきりと感じ取れると思います。

浅煎りははっきりと酸っぱくフルーティ。
深煎りははっきりと苦くコクがある。

焙煎度によって淹れ方のコツも実は違ったりするのですが、まずは好きに淹れてみてください
そこから、自分の好きな味わいを探っていくのもコーヒーの楽しみのひとつです。

焙煎度ごとの味の違いやその他の特徴については、こちらの記事でもまとめられていますので、気になる方は見てみてください。
⇒[焙煎を知ることは好みのコーヒーを知る近道です!]


②コーヒーの少しわかりにくい違い:産地(国)ごとの違い

コーヒーは農作物ですので、土壌や気候によっても味が変化します。
ワインの世界で「テロワール」とよく言われますが、コーヒーの世界では「マイクロクライメット」と呼んだりもします。
(※テロワールとマイクロクライメットは微妙に意味が異なります)

土壌や気候の違いを細かく見ていくと、農園ごとで使う肥料が違ったり、同じ農園でも標高が違えば風味も変わってくるんじゃないの?
と勘の良い方は気付かれるかもしれません。

たしかにそうなのですが、そこまで言ってしまうと、個々の銘柄ごとの話をしなくてはならなくなってしまいますね。

特にスペシャルティコーヒーの世界では、ロットごとにフレーバーの違いを確かめて販売しているお店も数多くあります。
なので気になる方はぜひ実際のお店に足を運んで、店員さんに銘柄の特徴を聞いてみてください。
とても興味深いお話が聞けると思いますよ。

コーヒーを選ぶ人

さて。
コーヒーはロットごとに細かくフレーバーが変わると言いましたが、産地ごとで見ても、おおまかな味の傾向はあります。

・南米(ブラジル・コロンビアなど)
・中米(パナマ・グアテマラなど)
・アフリカ(エチオピア・ケニアなど)
・東南アジア(インドネシアなど)

このような地域にわけて、味の傾向を見ていきましょう。
(参考書籍:「ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方」)

①南米地域
南米地域のコーヒーは、甘さと酸味のバランスが特徴です。
酸味が穏やかでバランスがよく、個人的にも「飲みやすい」と感じる銘柄が多いです。
コーヒー初心者の方にまずおすすめしたい地域が南米です。特にブラジルのコーヒーは万人受けしやすい風味ではないでしょうか。

②中米地域
中米地域のコーヒーは、軽やかで爽やかな酸味とフルーティー感が特徴です。
この地域の農園は世界のコーヒー産地の中でも標高が高く、高品質なコーヒーが育まれます。
特に「パナマのゲイシャ」と言えば世界的にも大注目の、高級コーヒーの代表格です。
⇒[最近耳にする「ゲイシャ」ってどんなコーヒー?]

③アフリカ
アフリカのコーヒーは、芳醇で濃厚な香りと際立つ酸味が特徴です。
アフリカの中でもエチオピアはコーヒーが生まれた土地として有名で、フローラル感や上品な酸味が感じられるコーヒーが育てられています。
酸味があるコーヒーが好きだという方には、アフリカ地域のコーヒーをぜひおすすめしたいです。

④東南アジア
東南アジアのコーヒーは、ボディ感と苦みの重厚な風味が特徴です。
アフリカとは対照的に、マンデリンに代表されるように、深煎りでどっしりとした、アーシー感のあるコーヒーがよく栽培されています。
ガツンとした苦みとコクが感じられ、カフェオレにするにもバツグンの相性です。

一方で近年では、東南アジアでも浅煎り用にフルーティーさの感じられるコーヒーも栽培されるようになってきています。
一例として、バリ島ではLIGHT UP COFFEEさんが現地農家さんと作り上げてきた農園で「コーヒー農園オーナー制度」を始め、東南アジア産の浅煎りスペシャルティコーヒーを提供しています。

東南アジアの浅煎りコーヒーはまだまだ珍しいかと思いますが、今までの「深煎り! 苦み!」といったイメージを覆す衝撃的な味わいを楽しむことができます。
なかなか手に入る機会も少ないかなとは思いますが、もし出会いがあればぜひ飲んでみてほしいです。

ここまで、地域別のおおまかな味わいの傾向をお伝えしてきました。
細かい国別のフレーバーについては、過去のこちらの記事(コーヒーの産地ごとの特徴)で解説しております。
「もっと詳しく知りたいよ!」という方は、ぜひこちらの記事も参考にしてみてください。


③コーヒーの難しい違い:精製方法(生産処理)の違い

最後に解説するのが、精製方法の違いについてです。
生産処理とも言います)

コーヒーチェリーがコーヒー豆になるまでの過程の中でも軽く触れましたが、コーヒーの実が収穫されたあと、精製という工程があります。

さくらんぼの実に似た「コーヒーチェリー」から中の種(コーヒー生豆)を取り出すまでの間に、「発酵」や「乾燥」などの処理を行います。
これが精製(生産処理)です。

この精製のやり方によって、コーヒーの酸味フルーティーさ風味質感が変わります。

近年ではより希少性の高いコーヒーを作るため、それぞれの農園で独自の精製工程を研究している場合もあります。
(希少なフレーバーを作ることによってオークションで高値で売れるなど、生産者さんの収入が増えるのです)

精製の違いによる味の変化は、焙煎度の違いや産地の違いほど大きな差を感じにくいかもしれません。
※ただし特殊なフレーバーがつく精製を除く
そういった意味で、精製方法の違いは「コーヒーの難しい違い」としてご紹介しています。

コーヒーの精製方法による違いはわかりにくい

たとえば、こんなコーヒーを見たことはないでしょうか?
「エチオピア・イルガチェフェG1ナチュラル 浅煎り」
「エチオピア・イルガチェフェG1ウォッシュド 浅煎り」
スペシャルティコーヒーを取り扱うお店ですと、エチオピア浅煎りの精製違いを私はよく見かけます。

お店の方の説明コメントや商品表示を見るとフレーバーが異なるように書かれてはいますが、味の差はコーヒー初心者の体感ではかなり小さく、フレーバーの差を掴みにくいと思います。
「どっちも酸味があるなー、こっちの方がちょっと甘いかな? もう片方の方がちょっとすっぱいかな?」くらいの感想になりやすいです。

ですので、精製方法による味の違いは、この記事の中では一番難しい「違い」として挙げています。

コーヒーって奥が深い

代表的な精製方法は、
・ナチュラル
・ハニープロセス(パルプドナチュラル)
・ウォッシュド
の3種類ですが、より細分化することもできます。

詳しくはこちらの記事にて解説していますので、もっと知りたい方はご覧ください。
⇒[ナチュラル?ウォッシュド?コーヒーの精製処理とは]


①ナチュラル精製
ナチュラル精製は、摘み取ったコーヒーチェリーを「さくらんぼ」の状態のまま乾燥させ、生豆として出荷するときに中の生豆を脱穀します。
乾燥は、天日干しであったり機械乾燥であったり、地域によってもさまざまです。

ナチュラル精製の味わいの特徴は
・甘さが増す
・質感が増す
・酸味が弱くなる
といったものがあります。

 

②ハニープロセス(パルプドナチュラル)
コーヒーの種(生豆)と果肉の間には、糖質でできたヌメヌメの層があります。これをミューシレージと呼びます。

【コスタリカではミュシレージのことをミエルと呼び、ミエルは蜂蜜の意味もあるので、ミュシレージを残して乾燥するこの精製方法をハニープロセスと呼びます。】(引用:ナチュラル?ウォッシュド?コーヒーの精製処理とは
(ハニープロセスの名前の由来には諸説あります)

ハニープロセスではコーヒーチェリーの果肉だけを除去し、粘液部分(ミューシレージ)を残して乾燥させます。
ナチュラル精製とウォッシュド精製の間のような乾燥方法です。

ちなみに、粘液部分を残す量によって色が変わってくるので、粘液の多い順に
・ブラックハニー
・レッドハニー
・イエローハニー
・ホワイトハニー
と呼び方が変わります。

ハニープロセス(パルプドナチュラル)の特徴は、
・ミューシレージが多いほど甘さが増す
・ミューシレージが多いほど質感が増す
・ナチュラル精製と比べて酸の質が明るい
というように、ナチュラルとウォッシュドの中間のような味わいになります。難しいですね!

 

③ウォッシュド精製
ウォッシュド精製は水洗式とも言います。
その名の通り水で洗い流す工程がある精製方法で、汚れた水の排出量が多く環境負荷が高いため、導入を控えたり方法を改良する農園も近年増えています。

ウォッシュド精製ではコーヒーチェリーから果肉を除去したのち、発酵させミューシレージを洗い流します。
(ウォッシュド精製と一口に言っても地域によってやり方は細分化され、発酵の有無や発酵時間などさまざまな条件が異なります)

ウォッシュド精製の特徴は
・酸味が増す
・クリーンな風味になる
という傾向があります。

(参考書籍:「Coffee Fanatic 三神のスペシャルティコーヒー攻略本」
「ザ スタディ オブ コーヒー」)

精製については、この記事では解説していない精製方法についてもこちらの記事で紹介しています。
⇒[ナチュラル?ウォッシュド?コーヒーの精製処理とは]


この記事では、コーヒーの味の違いを感じ取れるようになるための3つのポイントをお伝えしてきました。
①焙煎度
②産地(国)
③精製方法(生産処理)

わかりやすい違いから、コーヒーを飲み慣れないとわかりにくい違いまで、さまざまです。

「○○の違いをわかるようになりたい」
「コーヒーのプロフィールに書かれたフレーバーを感じ取れるようになりたい」
など、早くわかるようになりたい! と気が急く気持ちもわかります。
コーヒーが好きになると、もっと知りたい、さらに深く知りたいと思うものですよね。

けれど、焦らなくて大丈夫です。
今こうしてコーヒーヲタクで記事を書いたり、コーヒーブログを運営するくらいになった私も、最初はコーヒー初心者でした。
もちろん、味の違いなんてわかりません。

そんな私が最初にわかるようになった違いは、「おいしいか」「おいしくないか」でした。
「カッピングスコアが高いコーヒー」がわかるようになったという意味ではありません。
自分にとっておいしいか。
つまり、「自分が好きなコーヒーか」「自分にはまだ早いコーヒーか」という主観的な違いです。

おいしい/おいしくないの違いから、まずは自分の好きな焙煎度や産地を覚え、
ナッツの風味が感じられるって書いてあるコーヒーが好きなのかな
レモンとか柑橘系のフレーバーが書かれているのは苦手なのかな
なんて、少しずつ「主観」だったものを言葉で理解できるようになっていきました。

最初は、おいしいか/おいしくないかとか、好きか嫌いかがわかるようになれば充分だと、実体験から思います。

コーヒーは嗜好品です。
お店の人も、根本にある気持ちは「コーヒーを楽しんでほしい」と思っていらっしゃるのではないかなと私は想像しています。

だからあなたがコーヒーを楽しめるように、急いで勉強しなくても、まずは「おいしい!」と思えるコーヒーを見つけてみてください。
あなたのコーヒーライフがより豊かになることを心から願っています。

それでは最後に、この記事で紹介したコーヒーヲタクの過去記事についてまとめておきます。
・インスタントコーヒーと缶コーヒーの違いについて⇒[コスパは?見分ける方法は?インスタントコーヒーとレギュラーコーヒーの違いを調べてみました!]
・焙煎度について⇒[焙煎を知ることは好みのコーヒーを知る近道です!]
・産地(国)別の味わいについて⇒[コーヒーの産地ごとの特徴]
・精製方法の違いについて⇒[ナチュラル?ウォッシュド?コーヒーの精製処理とは]

この中から気になる記事がもしあれば、次はそちらを読んでみてください。
コーヒーのフレーバーを感じ取るためのヒントになるかもしれません。

この記事を書いた人

MAAYA YAMASHITA

コーヒーを愛してやまないフリーランスWebライター。ツイッター⇒@mayacafe24