コーヒーを挽いてもらう時の注意点。挽き目と味の違いを検証しました。
COLUMN 2023.02.13
コーヒーヲタクの読者さんは、自宅にコーヒーミルがあって自分でコーヒー豆を挽くという方も多いと思います。
けれど一方で、スーパーなどで最初から粉の状態で売られているコーヒーを買ったり、コーヒー専門店でも豆を挽いてもらって購入したりしているという方も多いでしょう。
さて皆さん。
そのコーヒーの挽き目(粒度)って、本当に適正ですか?
今回の記事では、コーヒーの挽き目(粒度)を意図的に細かくしたり、粗くしたりして味わいにどのような変化があるのかを実験しています。
・粒度が細かすぎる場合
・粒度が適正な場合
・粒度が粗すぎる場合
それぞれの味わいを細かくチェックしてレビューしていますので、自分が普段飲んでいるコーヒーの味わいとぜひ比べてみてください。
「あれ、細かすぎる場合の味わいにちょっと似ているぞ?」
とか
「粗すぎる場合の特徴に近い味わいを感じるなぁ」
とかありましたら、それは挽き目(粒度)を調整してみた方が良いサインかもしれません。
また、コーヒーの挽き目(粒度)を
細かくする←→粗くする
と微調整することで自分好みの味わいに近付けることもできます。
出したい味わいによって、挽き目(粒度)をどのように調節したら良いかも解説していますので、おうちコーヒーをよりいっそう楽しむために、ぜひ参考にしてみてくださいね。
LIST OF CONTENTS
今回の実験に使ったコーヒー器具と抽出レシピ
今回の実験では、これらの器具を使いコーヒーを抽出しました。
・Brewistaケトル(調温できる電気ケトル)
・ハリオV60ドリッパー(プラスチック製1~2人用)
・アバカフィルター
・Brewistaドリップスケール
・カリタコーヒーサーバー
コーヒーミルは、ミル内部での粉残り(リテンション)が起こらないように、直下型のミルを使用しました。
タイムモア社の「グラインダーGO」です。
あまり細かく挽き目(粒度)を変えることはできませんが、エスプレッソ用の極細挽きからフレンチプレスに使える粗挽きまで対応しています。
使用した豆はシティローストのブレンドです。
抽出レシピは
・リンス有り
・湯温93度
・豆量12g
・注湯:30cc+60cc+60cc+50cc+50cc=合計250cc(蒸らし30秒、2投目以降は落ちきり後に注湯)
ちなみに実験結果をちら見せすると……
極細挽きで淹れたコーヒーと粗挽きで淹れたコーヒーですが、液色は「言われてみれば少し違うかな?」程度でほとんど同じですよね。
でも味は……だったんです。
さぁ、各実験の結果を見ていきましょう。
細かすぎる挽き目(極細挽き)のコーヒーは濃くなりすぎて身体にも悪い
まずは極細挽きのコーヒー粉を使い抽出してみました。
粒の大きさにはややばらつきがありますが、だいたい500~600マイクロメートルくらいです。
これはエスプレッソやマキネッタで推奨される粒度となっています。
実験レシピで抽出してみると、抽出時間は7分50秒かかりました。
コーヒー粉が泥のように細かくなってしまって、お湯が全然落ちず、抽出にとても時間がかかりました。
もう、この時点で不味いことが確約されているようなコーヒーなので、飲むのが正直怖いのですが……飲んでみますね。
【極細挽きでドリップしたコーヒーの味は?】
苦み | コク | 香り | 甘み | 酸味 |
4 | 4 | 3 | 3 | 2 |
それぞれの項目をむりやり点数化はしたものの、褒めてはいないんです。
ただ「強く」感じられた項目の数字が大きくなってしまっているだけで。
詳細レビューにご注目ください↓↓
一口。コーヒーを口に含んだ瞬間に脳が「???」となりました。
今までに経験したことのない情報量。とにかく濃いのです。
コーヒー豆が持つポテンシャルを凝縮してぶつけられたような感覚に、脳が味わいを処理しきれず、まず大混乱しました。
味わいとしては「苦み」を特に強く感じます。
カップに鼻を近づけるとおいしそうな香りがするのですけれど、そこで騙されてはいけません。
甘みや香りも感じ取ることはできましたが、なにぶん濃いのです。
何とか飲むことはできますが、湯量が豆量の20.8倍という薄めのレシピに助けられているお陰だなと感じます。よくある15倍レシピで淹れていたら、とても飲むことはできなかったでしょう。
5項目の中では「酸味」が弱くしか感じ取れず、豆の持つ果実味を引き出すことができませんでした。
また、この弱々しい酸味の中には「なんとなく嫌な雑味」も混ざっているような感じがしました。
冷めてくると雑味がさらに強くなり、いかにも「淹れるのに失敗したコーヒー」という味わいに変化しました。
【蛇足】
飲みきれずに途中でごちそうさまをしたのですが、後から頭が重たくなるタイプの頭痛と、胃の気持ち悪さを感じました。
体調への影響は個人差が大きいかもしれませんが、私個人としてはこのような変化を感じたことを補足情報として記載しておきます。
粗すぎる挽き目(粗挽き)のコーヒーは薄くて香りのするお湯状態に
次の実験は粗挽きのコーヒー粉での抽出です。
微粉も混じってしまいましたが、だいたい1400~1600マイクロメートルの粒の大きさです。
これはフレンチプレスやコールドブリューで推奨される粒度とされています。
実験レシピで抽出してみると、抽出時間は3分23秒かかりました。
時間だけ見ると、一般的な抽出時間の範囲内です。
(※微粉が含まれていたので、ペーパーがやや詰まってしまったのではないかと考察しています)
【粗挽きでドリップしたコーヒーの味は?】
苦み | コク | 香り | 甘み | 酸味 |
2 | 1 | 2 | 4 | 2 |
全体的に数字が小さくなりました。
甘みだけが突出しましたが、他は全体的に弱々しく、とにかく薄いコーヒーに。
「薄い」としか言うことがないのですが、詳細レビューもご用意いたしました↓↓
抽出液の色や抽出時間から「意外と飲めるコーヒーになっているのではないか」と期待したのですが、飲んでみると「粗挽き」がきちんと反映されて、薄いコーヒーになっていました。
苦みがなくて、とにかく甘さ優位の味わいに。
もしかすると、人によっては「飲みやすい」と感じる味わいかもしれないなと思いました。
酸味も無ェ、苦みも無ェ、味はあるけど個性が無ェ
なんて思わず替え歌をしてしまう事態に。
頑張って探せば「香ばしさ」程度の苦みはあるかな……???
と評価をすることもできなくはないのですが、「香るだけの茶色い液体」と斬ってしまった方がわかりやすいです。
冷めてくると甘みが酸味に変化したくらいで、味わいに厚みがありませんでした。
風味の層は一応あるもののひとつずつが弱すぎる+メインの味が出ていないと感じました。
特にコクが弱く、舌触りもサラサラとしていてお湯に近いです。
極細挽きよりは飲みやすくはありますが、ネガティブな要素もなければポジティブな要素もない、つまらない液体です。
適正な挽き目(ドリップ用)のコーヒーは当然だけれどちょうどいい味
適正な挽き目ではどれだけおいしいコーヒーを淹れることができるのかも確認しましょう。
900~1000マイクロメートルの粒の大きさで、ドリップ、プアオーバーに適した粒度に設定しました。
実験レシピで抽出してみると、抽出時間は3分45秒となりました。
このレシピだと3分半が理想かなと思っているので、微粉詰まりがやや起こってしまっていたかもしれません。
でも大きな失敗というほどではない範疇かと思いますので、「おうちでドリップするなら毎回多少はブレるよね」と許していただけたら助かります。
【適正な挽き目でドリップしたコーヒーの味は?】
苦み | コク | 香り | 甘み | 酸味 |
4.5 | 4 | 5 | 3.5 | 3.5 |
見るからにバランスよく抽出されたのがおわかりだと思います。
もう「完璧」以外言うことがないのですが、「正解の味」がどうだったのか、今までの挽き目と比較したい方もいらっしゃるでしょう。
適正に淹れると今回使用した豆は、このような味わいになります↓↓
まず真っ先に感じるのが「おいしい苦み」です。
苦みの中に甘みもコクも包み込まれているのが「おいしい苦み」です。ただ苦いだけじゃないのです。
それから果実を思わせる酸味もしっかり感じられて、ロースターさんが表現したかったのは、この苦みと酸味の両立だったのかなと思わされました。
適切に抽出ができると「きっと限りなく正解に近い抽出だ」と自分で確信を持てるものなのですね。
舌当たりも滑らかで、粗挽きのサラサラした物足りない感じとも、極細挽きのザラついたような感じとも違う、品質の高さを感じることができました。
第一印象では苦みが強調されていましたが、温度が落ち着いてくるとフルーティな酸が前に出てきて、スペシャルティコーヒーらしさを感じることができます。
甘酸っぱくておいしい、良いコーヒーです。
口の中からも鼻からもおいしい香りが抜けていって、幸せな心地になりました。
冷めてから雑味が出ることもなく、温度変化をポジティブに楽しむことができるのも適正な抽出のお陰ですね。
甘さやトロっとした感じが増して、飲みきるまでネガティブな要素を一切感じることがありませんでした。
飲み終わってもいつまでも良い香りが口から鼻から肺から感じられて、幸せに暮らしました。めでたしめでたし。
挽き目(粒度)を調節して自分好みのコーヒーを淹れるコツとは?
ここまで
・細かい挽き目
・中間の挽き目
・粗い挽き目
の3パターンを見てきました。
細かすぎるのも粗すぎるのもおいしくない、ということは簡単にわかりますが、「細かすぎる場合」と「粗すぎる場合」のおいしくなさは全くの別物です。
ここに、挽き目(粒度)調節のヒントが隠されています。
【コーヒーの挽き目(粒度)を細かくすると】
・苦みが増す
・コクが増す
・酸味が減る
・果実味が出にくい
・雑味が増える
・濃さを感じられる
一方で、
【コーヒーの挽き目(粒度)を粗くすると】
・苦みが減る
・コクが減る
・酸味・甘みが増す
・雑味が減る
・あっさりとした仕上がりになる
このような特徴を見つけることができました。
つまり
「もう少し苦いコーヒーが好きだな」
と思ったら少しだけ挽き目(粒度)を細かくしてみるだとか
「なんだか雑味が感じられるな」
と思ったら次は少し粗く挽いてみるという工夫をすることができます。
・苦みを増やしたい/減らしたい
・コクを出したい
・雑味を減らしたい
・酸味を増やしたい/減らしたい
などなど、好みによって微調整をしたくなることもあるでしょう。
コーヒーの味わいが変わるポイントは挽き目(粒度)だけではありませんが、自分好みのコーヒーを淹れるためのコツとして、「挽き目を細かくするとどう変わるか」「挽き目を粗くするとどう変わるか」を押さえておくと良いでしょう。
お店の人に挽いてもらう場合も、「前回の挽き目だと少し苦かったのでもう少し粗く挽いてください」などと伝えてみて、自分好みの挽き目を探してみるのがおすすめです。
お店の人とのコミュニケーションも楽しんでみてください。
身体を張った(舌を張った?)実験、楽しんでいただけましたか?
・コーヒーの味を自分好みに近付けるため
・よりいっそうおいしいコーヒーを抽出するため
SNS上やさまざまなブログ・サイトで日々コーヒーの淹れ方のアドバイスを求めたり提供したりといったやりとりがなされていますね。
私自身もよくツイッターで
「浅煎りのコーヒーを淹れたらすっぱくなりすぎたんですけど、どうしたらいいでしょう?」
なんてフォロワーさんに問いかけたりしています。
「もっと細かく挽いたらいいよ」
「抽出時間を変えてみては?」
「温度は何度で淹れていますか?」
などなど、たくさんのお返事が返ってきて、そこからコーヒー論議が盛り上がったりします。
ひとつのコーヒーをよりおいしくしたい、というだけでも無数に答えがあって、今回実験した「挽き目(粒度)」はその答えのひとつです。
しかもたくさんの方に聞けば聞くほど、「粗くしてみたら?」と「細かくしてみたら?」と、正反対のアドバイスをいただくこともしばしば……。
人によって「おいしい」も「飲みやすい」も異なるのですから、みんな違ってみんなおいしいのですよね。
今回の実験結果では、「挽き目を細かくしたらどうなるか」「粗くしたらどうなるか」の基本的な差を解説できたのではないかと思います。
これらの違いを念頭に置いて調節するだけでも、自分好みのコーヒーを淹れやすくなるはずですし、アドバイスをくださった方がどのような意図で挽き目の調整を提案したのかも想像しやすくなります。
この記事だけではわからなかったこと、コーヒーヲタクに実験してほしいことなどありましたら、お気軽にコーヒーヲタクのツイッターに声をかけてください。
感想、お待ちしております。