10万円で買える?札幌市で本格焙煎機を造るヲタクの夢。
SPECIAL 2018.07.05
JR白石駅から歩くこと8分。白石・中の島通から曲がって少しすると、一見おしゃれな木造住宅に見えるお店、焙煎研究所が見えてきます。
ドアを開けると、まず焙煎機がお出迎え。
入ってすぐ右手に喫茶スペースがあり、店内はオーナー自らほとんどの内装を手がけたという空間が広がります。
店内には様々な見どころがありますがまず目が行くのは、2台の焙煎機が並んでいる光景。
玄関先の焙煎機と合わせ、ここまで見ただけでも計3台の焙煎機が店内にあることになります。
実はこの焙煎研究所は、ステンレスをベースに、食品関連の機械やその周辺設備を製造している株式会社白石製作所の事業の一環。
店内の焙煎機は全て自社製品で、一から作り上げた一点物なのです。
今回は焙煎研究所オーナーにして株式会社白石製作所 代表取締役の吉田元海さんにお話を伺い、
なぜ焙煎機を開発したのか、そして焙煎研究所とはどういうことを行っている場所なのかについて迫っていきます。
LIST OF CONTENTS
- 1. 焙煎機について
- 2. こだわりと開発のきっかけ
- 3. 屋外で焙煎ができる
- 4. 今後の開発計画と販売価格
- 5. 焙煎研究所について
- 6. 今後の展望
- 7. 焙煎機以外もほぼ『自家製』のお店
- 8. 焙煎体験について
- 9. 焙煎をもっと身近に
- 10. 焙煎体験に来た人の感想と焙煎の出来具合
- 11. コーヒーについて
- 12. 吉田さんにとってコーヒーとは
焙煎機について
こだわりと開発のきっかけ
焙煎研究所ではどのようにして焙煎機を開発することになったのか。その経緯と焙煎機のこだわりを伺っていきます。
焙煎機を開発したきっかけを教えてください
ある時、焙煎機を開発してほしいという人がうちの会社(白石製作所)のHPを見ていらっしゃいました。
今までに焙煎機を作ったことがなかったので、すでに世の中にあるものだったら、それを買ったほうが安いですよとお話しましたが、まだ世の中にないものを作りたいとのことだったので、開発することになりました。
開発には6ヶ月くらいかかり、1号機から4号機までの焙煎機を作りました。
1号機は温度が上がらず、随時改良したのですが、つぎはぎだらけになってしまったので、そのノウハウを活かし、2号機を作りました。
これはけっこう調子がよかったんですが、複雑に作りすぎて微調整がしにくかったので、シンプルな作りで改造しやすい3号機を作りました。
4号機は3号機の構造を元に小型化をしたものです。
1号機
左:3号機 右:4号機
焙煎機は全て遠赤外線のコンロを使える焙煎機というコンセプトの元、開発を行っています。
一般の焙煎機とは違い、遠赤外線を使って焙煎することができるので他の焙煎機とは違う焼き上がりになるはずです。
遠赤外線に注目したのはなぜですか
焙煎機の作成を依頼してきた人が遠赤外線が焙煎に良いとお話されていたからです。
実際、この焙煎機で焙煎したコーヒー豆はふっくら焼けている感じがして好きです。
屋外で焙煎ができる
家庭用焙煎機を追求した結果、開発に至ったという屋外焙煎機について伺っていきます。
他にも焙煎機を作っていたら教えてください
元々4号機は家庭用をイメージして小型に開発したのですが、それでも一般のご家庭では置き場所に困りますよね。
家庭用といっても家の中に置くだけが家庭用じゃないなと考え、ステンレスで作れば外に置いても錆びないから屋外でも使えると思いつき、開発したのが屋外型焙煎機である6号機です。
実際、外で焙煎してみるときちんと焙煎ができました。
バーベキューコンロの上に乗せても焙煎できましたし、熱源を自由に変えられるのでコンロの熱源を炭にすれば炭火焙煎もできます。
屋外でも焙煎ができるように開発された6号機
焙煎機は通常、排気設備や計器などがついていて大型のものがほとんど。屋内での使用が基本です。
一般の喫茶店では食品を扱っている衛生上の理由なんかで、外で焙煎をするという発想がなかなかないと思います。
ですが、自分で飲んだり、友人同士で飲むコーヒー豆くらいは外で焙煎をしても良いと思います。
キャンプに行った初日に焙煎をして、翌朝飲むコーヒーなんて美味しいと思いますよ。
なので、今年は色んなキャンプ場にこの焙煎機を持って行き、実際に焙煎をする広告活動をしていきたいと思っています。
休日に物置から焙煎機を出してきて焙煎をして、終わったらまた物置にしまうみたいなことができるんですね。
そうですね。この際、物置の扉や車庫のシャッターを開けて焙煎をしても面白いと思います。
ピザ窯を庭先に作る人がいますけどああいったようなイメージです。
今後の開発計画と販売価格
今後の焙煎機の開発予定と販売価格について伺っていきます
現在、焙煎機は6号機まで作ったということでしたが、今後、新しく焙煎機を開発する予定はありますか?
ほぼ6号機で完成ですね。
ここからは焙煎機を新しく開発するよりも、今ある焙煎機をどう使っていくかだと思います。
ハード面じゃなくてソフト面をつめていく感じです。
より微調整ができるように色んな計器をつけたりして精度が高く焙煎できるように改造するなら、既存の焙煎機を買えばいいかなと思います。
この焙煎機は窓越しに見える色、焙煎機から出てくる匂い、ハゼの音、の三つで焼き具合を調整していくような焙煎が適していると思いますし、それが面白いと思います。
焙煎機はどのくらいの価格で販売していますか
うちの焙煎機は10万円で販売しています。
職人が一つ一つ手作りで作っているので、正直価格はギリギリなのですが、テレビや冷蔵庫などの家電と同じ様な価格帯。
家電を買う感覚で焙煎機を買う、みたいな感じで考えていただければいいかと思います。
ボタンを押したら自動で焙煎ができるというわけではないですし、モーターがついていて自動で回転するわけでもないので毎回同じ味を再現するのはなかなか難しいと思います。業者向けではなく、一般の方向けの焙煎機ですね。
焙煎研究所について
今後の展望
焙煎研究所を今後どのようなお店にしたいか伺っていきます。
これから焙煎研究所をこういうお店にしたいという考えはありますか?
他の喫茶店と同じ土俵に立つ気はありません。
うちは工場がやっている喫茶店なので、ものづくり企業ということをアピールできる喫茶店にしています。
内装や店内の小物作りも自分たちで行っていますし、焙煎機にどんどん触れられるよう、焙煎体験も行っています。
コーヒーや焙煎を身近に感じてもらえるようなお店にしていきたいと考えています。
焙煎体験はもちろん、コーヒーやフードのメニューも豊富
焙煎機以外もほぼ『自家製』のお店
焙煎研究所では店内の内装や小物はほとんど自分達で作ってしまうとのこと。
どんな物を作ったのか伺っていきます
店内にあるもので焙煎機以外に作っているものがあったら教えてください
薪ストーブとかですかね。クリスタルをイメージして作りました。
あとはステンレスのドリップポットの先端を細く加工して販売しています。
クリスタルをイメージした薪ストーブ
先端を細く加工したドリップポット
店内の椅子やカウンターも私が溶接して作りました。
カウンターの天板は遊園地の観覧車を作った時に割れてしまったガラスを再利用して作ったものです。
ドリップスタンドやネルホルダーも作成し、ネルホルダーは販売もしています。
カウンターの天板
ネルを取り外して洗うことができるネルホルダー
焙煎体験について
焙煎をもっと身近に
店内で気軽に行えるという焙煎体験について伺っていきます。
焙煎体験について教えてください
今まで一般の方が焙煎をするとなると手編みの網かサンプルロースターくらいしか選択肢がなくて苦労していたと思います。
でもそれだとなかなか上手に焙煎できず、少量しか焼けません。
うちの焙煎機なら500g一気に焙煎できますし、ムラなく焼けます。
すでに何名かの方が焙煎を体験してくださり、リピーターになってくれた方もいます。
そういう輪をもっと広めていきたいと思います。
焙煎をしてみたいという人はたくさんいると思います。
ですが、焙煎って難しそうと考えて諦めている人も多くいると思います。
プロがするような精度が高い焙煎はなかなか難しいですが、焙煎をそんなに難しく考える必要はありません。
一度焙煎をしてみたい、好きなコーヒー豆を自分で焙煎してみたいという人はうちに来ていただければ丁寧に指導しますので安心して焙煎を体験できます。
コーヒー豆は持ち込みでも大丈夫なんですか?
大丈夫です。一般の方はなかなか生豆を買えないと思うので、今は生豆代込の値段で焙煎体験を行っていますが、生豆を持参した人には、その分安くします。
例えば、奮発して高い生豆を買って、焙煎するとしても、手編で焙煎するのはちょっともったいないですよね。
一般の喫茶店に持ち込んでも、なかなか焙煎機って触らせてもらえないし、委託して焙煎してもらうのも難しい。
だからちょっと良い豆を買ったから焙煎してみたいという人はうちに来ていただければと思います。
焙煎体験に来た人の感想と焙煎の出来具合
焙煎体験にはどんな人が来ているのか、また、実際に焙煎をした方の出来具合はどうだったのかについて伺っていきます。
実際に焙煎体験をされた人の感想や完成したコーヒー豆の出来具合はどうでしたか?
ふっくら焼き上がると言って皆さん喜んでくれています。
私が隣について指導するので大きな失敗をすることはないですし、皆さんけっこう上手く焙煎できていますよ。
うちの焙煎機には窓が付いていて焙煎中のコーヒー豆の色が見えるので、中煎りとか深煎りとかの狙った焙煎度合いで焼き上げることができます。
ただ、思ったよりコクがでなかったと言っている人もいます。
その辺りは焙煎の奥が深いところですね。
中の様子が見える小窓
私もこの焙煎機を扱いだしてまだ半年ですが、この焙煎機を一番うまく扱えるのは自分だと自負しています。
私がもっと上手く焙煎できるようになれば、焙煎体験にいらした人にもっと適切なアドバイスをして、より美味しいコーヒーを焙煎してもらえるようになると思うので、試行錯誤しながら焙煎しています。
焙煎体験に来られる人はどんな人が多いですか?
仕事を定年退職した人が焙煎を体験してみたいということで来ていることが多いです。
ある程度焙煎機の構造を知っている人がこの焙煎機を見ると、なんだこれ、と思われることもありますが、実際に焙煎した豆を見ると皆さん驚かれますよ。
店内の焙煎機で実際に焙煎されたコーヒー豆
コーヒーについて
吉田さんにとってコーヒーとは
焙煎機を造るだけでなく実際の焙煎を行い、日々研究を続ける吉田さんにとってコーヒーとはどういうものかを伺っていきます。
吉田さんにとってコーヒーとはどのようなものでしょうか
いつも悩んでいます。美味しいコーヒーは人それぞれだと理解しましたが、良いコーヒー豆ってなんだろうなって。
模範解答で言えば、良いコーヒー豆はスペシャルティコーヒーだよ、となると思うのですが、自分で買ったスペシャルティコーヒーの生豆がひどい状態だったこともありました。
そんなことがあるとほんとにスペシャルティコーヒーってだけで信用していいのかな、良いコーヒー豆ってなんだろうなって悩んでしまって。
折角生産農家が手間暇かけて作った良いコーヒー豆であっても保管や輸送が良くなくて、悪くなってしまっていることもあるんじゃないかと思ってしまいます。でもそれを言い出したら流通の段階からコーヒー豆を見てないといけない。
だから、将来的にコーヒー農園をやろうと思っています。自分の目の届く範囲で、北海道でコーヒー豆を生産しようと。
自分達で実を摘んで、加工したコーヒーを提供したいと思っています。
北海道で栽培するとなるとハウスで栽培しないといけないと思うので、見渡す限りうちのコーヒー豆ですみたいに大量に栽培することは無理だと思います。
農業は難しいですからね。面白いけど、まだまだ話しているだけです。
試験的に店内で育てているコーヒーノキ
焙煎体験や焙煎機の販売を通してもっと焙煎を身近に感じられる場所を目指している焙煎研究所。
焙煎機のショールームも兼ねている焙煎研究所の喫茶スペースでは、
自社製焙煎機で焙煎されたコーヒー豆を使用したコーヒーの提供やコーヒー豆の販売もおこなっています。
ネルドリップで一杯ずつ丁寧に抽出したコーヒーと自家製スイーツの組み合わせは格別です。
お店一推しの焙煎体験で実際に焙煎した豆は持ち帰ることができます。
焙煎体験をしてみたい方はお店にお電話やメールなどで問い合わせてみてください。
美味しいコーヒーを楽しみたい方、焙煎に興味がある方は必見のお店。
オーナーの吉田さん曰く「これからもどんどん面白いことをしていきますよ」とのこと。
今後も焙煎研究所から目が離せません。
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INFORMATION
店舗名 | 焙煎研究所 |
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住所 | 札幌市白石区本通3丁目北3-26 |
TEL/MAIL | 050-3402-1226 / otoiawase@baisenken.com |
WEB | |
営業時間 | 10:00-16:30 |
定休日 | 日曜日 |
焙煎機 | 白石製作所製 オリジナル焙煎機 |
エリア | |
豆の販売 | あり |