「お客さんだけでなく自分も感動できる店を作りたい」MORIHICO.代表市川さんに店作りのこだわりをお聞きしました

「お客さんだけでなく自分も感動できる店を作りたい」MORIHICO.代表市川さんに店作りのこだわりをお聞きしました

SPECIAL 2018.11.13

札幌を中心に幅広い活動をしているコーヒー店、MORIHICO. COFFEE OTAKUでは代表の市川さんにインタビューをさせていただき、前回の記事では焙煎について伺った内容をお伝えしました。

前回のインタビューはこちら「北海道はコーヒーのメッカと言われたい」MORIHICO.代表市川さんに焙煎の哲学を伺いました

その後編となる今回は、市川さんがお店を作る上で大切にしていることや、最初の『森彦』を作り上げた時のエピソードを中心にお届けします。

MORIHICO.の考える【スペシャルティーコーヒー】

MORIHICO.でお客さんに人気のコーヒーはどのようなものでしょうか

実際によく売れているのは深煎りのコーヒーです。
ただ、コーヒー屋としては 浅煎りから深煎りまでのラインナップ全部にお店の味わいを表現しているので、幅広く飲んでいただきたいです。

深煎りから浅煎りまで幅広いラインナップのコーヒー豆

深煎りから浅煎りまで幅広いラインナップのコーヒー豆

僕自身、どれが一番美味しいと思っているわけではなく、シチュエーションごとに飲みたいコーヒーが変わります。今の気分によって浅煎りのコーヒーがいいと思う時もあれば深煎りが飲みたい時もあります。

MORIHICO.といえば深煎りのイメージがあったので、驚きました。

僕自身はね、浅煎りも好きなんですよ。だけどうちで浅煎りを販売すると一番売れないんですよ笑

浅煎りといえば、スペシャルティーコーヒーの焙煎度合いとしても人気ですよね。
市川さんはスペシャルティーコーヒーについてどのように考えていますか?

まず、MORIHICO.が通常のコーヒーとスペシャルティコーヒーに対してどういう風に考えているのかお話した方がいいのかもしれませんね。

例えば、スペシャルティコーヒー、特にコンクールで入賞したコーヒーと言ったら、それだけで美味しいと思えてしまいます。
要するにコーヒーは、頭でも半分飲むわけです。

コンテスト優勝のコーヒーと聞いたら、それだけで美味しそうなコーヒーだなぁと思ってしまいます

そうなんです。
例えば、ブラジルのNo.2という広く普及している、スペシャルティーコーヒーではないコーヒーがあります。
スペシャルティコーヒーだと言って色んなブラジルのコーヒーが出てきますが、ブラインドテストをすると通常のコーヒーであるNo.2の方がスコアが高い時があるんですよ。

通常のコーヒーがスペシャルティコーヒーより美味しいことがあるんですね

NO.2は国をあげてしっかりと管理をして作っているコーヒーなので、下手なコーヒーは太刀打ちできないんですよ。
ある意味、農園直のものというのは、そこに入らない品質のものが出回ってしまうことがあり、農園名がついているだけでもてはやされてしまう。

だから実際の味わいを公正に判断できるのはブラインドテストなんです。
そうやって考えた時に、通常のコーヒーがダメで、スペシャルティーコーヒーだけがコーヒーの中でトップクオリティーであり、美味しいコーヒーだと断定する考え方は僕は持っていません

MORIHICO.では必ず自分たちで飲んで判断しています。
受け売りで判断することはしないようにしてますね。

最初に森彦を作った時、技術もお金もなかった

最初に森彦を円山で開業する際に、苦労したことはありますか?

森彦は全部自力で作った店です。言ってみたら、技術もお金もなく、絶対に自分で店を作るんだという気持ちだけがありました。

だから人にとって一番大事なのはね、やる気なんですよ。
何かをやった人というのは、まず自分の思いをどう実現するかを必死になって考え、行動する。他は後からなんとかなると思います。

だから僕は森彦を作る時、まず大工道具を一揃い全部買ってしまいました。買ってしまったからこれはもう後に退けないぞと笑

大工道具を買い、自ら森彦を作った時のことを笑顔で話してくださる市川さん

大工道具を買い、自ら森彦を作った時のことを笑顔で話してくださる市川さん

森彦を作る時は、最初からこういうお店にしたい、という考え方がありましたか?それとも作りながら考えていったのでしょうか。

両方ですね。
最初にこうしたいなという思いと、作りながら少しずつ変えていって、後からずいぶんよくなったなと驚いた面とがあります。

お店を作るのに必要な知識やセンスはどのように磨かれましたか?

『センス』という言葉をある時調べたら、『共感力』と書いてありました。
そういう意味では僕はものすごく多感な人間だったと思います。
ものすごく色んなものに共感していました。

あともう一つが本物を見る機会が多かったかもしれないですね。
ようするに家の家系がそうだったんですよ。
家では絶対インスタントコーヒーは置かず、ミルで豆を挽いてコーヒーを淹れていたのをずっと子どもの頃から見ていました。
そういうのってすごく重要だと思います。

コーヒーをドリップ

MORIHICO.にはフェイクなものは置かず、手仕事による『本物のコーヒー』を提供することを大切にしているそうです

悪貨は良貨を駆逐する、じゃないけど、妥協し始めると、悪いものがあっという間に自分の周りを占拠し始めます。
だからそういった意味で妥協は絶対しないぞ、ということです。

同じコンセプトの店を作らない理由

市川さんから見て、MORIHICO.はどのようなお店だと思いますか?

MORIHICO.はコーヒー屋なんだけど、コーヒーを超えたこともいっぱいやっているちょっと特殊なコーヒー屋かな。
例えば商業空間のプロデュースだったり、マンションのプロデュースだったり。
たけどこれってコーヒー屋をやっていたからなんですよね。
そこから空間価値ってものに入っていって、それが商業空間のプロデュースの依頼が舞い込むようなところまできました。

コーヒーだけでなく空間も魅力的なMORIHICO.の様子

コーヒーだけでなく空間も魅力的なMORIHICO.

今はスイーツも全て自社製造してるし、先日はソフトクリームの商品開発をしました。
コーヒーというものを、コンパスで言う軸足にして、思いっきりサークルを広げていこうっていうのがMORIHICO.かなと思います。

近年MORIHICO.さんは様々なスタイルのお店を展開されていますが、それぞれのお店のコンセプトはどのように考えていますか?

僕ね、同じコンセプトのお店は作りたくないんですよね。
コンセプトが同じだと、だいたいできるものを想定しちゃうじゃないですか。
そうすると、まず自分が感動しないし、お客さんも感動しないだろうなと思います。

いつも自分がまだ体験をしたことないような景色を見たくて。
それで色んなお店を作っているんですよね。

「僕はいつもお客さんと同じ目線なんですよ」と語る市川さん

「僕はいつもお客さんと同じ目線なんですよ」と語る市川さん

僕はビジネススーツをほとんど着ません。
どうしてかと言うと、ビジネススーツを着ちゃうと、お客さんのことをターゲットだと思ってしまいます。
だけど僕はいつもこんな格好でお客さんに混じってあちこちのお店に行ったり街中を徘徊しています。

自分もお客さんの目線で街を見たり、お店を利用する。
お客さんじゃなくて、仲間なんだと。

この感覚を失ってしまったら、MORIHICO.でなくなってしまうんだろうなと思っています。

いかがだったでしょうか。
後編となる今回はMORIHICO.の代表である市川さんにスペシャルティーコーヒーのことや お店作りの哲学など、色々なことをお話していただきました。

市川さんはこれからも見たことのない景色を求め、様々なお店を展開するつもりだそうで、 次にどんなお店を作る予定なのかお聞きすると
「僕自身にもこれからどんな店を作るか全くわからないですね。でもそれが楽しいんです」 と笑顔で答えてくださいました。

これからも幅広い展開をしていくMORIHICO. 今後も目が離せません

この記事を書いた人

SHO KONISHI

記事を通して、皆さんがコーヒーを楽しむお手伝いができればなと思っています。
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