【Nonstop Coffee Stand &Roastery / 石川県 金沢市】リトルメルボルンを金沢から。伝えるために、走り続ける。
SPECIAL 2022.03.09
町屋の小さな扉の向こうには、わくわくするコーヒーの世界。
今回ご紹介する 『Nonstop Coffee Stand &Roastery』 は、
古き良き日本の伝統と、現代的でモダンなスタイルが混在する石川県金沢市にあります。
店主の山本史弥さんはオーストラリア留学中にコーヒーと出会い、未経験の状態から現地の大会でタイトルを取るほどのバリスタに。
帰国後にオープンした現在の店舗は、メルボルンスタイルにこだわったお店づくりから
金沢の”リトルメルボルン”として、コーヒーを通じて人と人の繋がりを生むコミュニティにもなっています。
オーストラリア留学中のお話を中心に、コーヒーとの出会いから帰国後お店をオープンするまでについてたっぷりお話を伺いました!
山本さんはオーストラリアでの留学を経てNonstop Coffeeを開業されていますが、それまではどういったお仕事をされていたんですか?
フリーランスでシステムエンジニアとして働いていました。オーストラリアへの留学も、エンジニアとしてのステップアップのために英語力を付けようと思ってのことだったので、当時はスペシャルティコーヒーという存在すらも知らなかったです。
オーストラリアにいらっしゃた時のお話しを詳しく伺いたいのですが、オーストラリアの中でもメルボルンを選んだのにはどんな理由があったんですか?
都市はシドニーやメルボルンなどいくつかありますが、シドニーは学生時代に行ったことがあったので、違うところがいいなと思っていて。なのでメルボルンにしました。そこから、ですね!全てが始まったのは・・・・・
そこから・・・コーヒーの世界を全く知らないところから今に至るまでも気になります!ちなみに海外に長期滞在するのは初めてだったんですか?
そうですね。初めての一人海外だし初めてのワーキングホリデーでした。ちゃんと入国できるか不安で、オーストラリアへ行く1ヶ月前に入国審査の練習がてらタイに行ったくらいです。(笑)
あとワーキングホリデービザは、取得してから1年以内に入国しないといけないんですけど、僕は期限切れになる2日前に日本を出ました。なのでもし入国するときに何かあって、日本へ一度帰らなきゃいけなかったら、メルボルンで過ごすことができなかったですね・・・
入国審査の練習・・・緊張感が伝わります(笑)
そんなぎりぎりのところでたどり着いたメルボルンで、どのようにしてコーヒーと出会ったのでしょう?
メルボルンではシェアハウスで生活をしていました。僕が選んだのは日本人しかいない部屋で。そのシェアメイトの中に、現地で6,7年バリスタをしているという人が2人いたんです。コーヒーの街メルボルンらしいですよね。これがもう始まりの始まりで・・・
メルボルンといえばカフェ・コーヒーの街なイメージです。身近にコーヒー業界の人がいる機会も多そうですよね。・・続きが気になります!
シェアメイトたちは昼間働いて、夜帰ってきたらなんと家でカッピングをしてるんですよ。僕は当時コーヒーのことを何も知らなかったので、粉に直接お湯をかけて、香りを嗅いでスプーンですすって、と言う動作を繰り返す行為も、夜にコーヒーを飲むということも不思議でしょうがなかったです。
なので、何をやってるんですか?と聞いてみたら「これはカッピングと言ってね・・」と教えてもらい、「一緒にやってみる?」となって。色々飲んでいくうちに、コーヒーって色々あるし想像以上に奥深いものなんだと知りました。
で!さらにそのとき、メルボルンで毎年開催されている ” MICE(マイス)”というコーヒーイベントがあって、シェアメイトに誘われて行ってみたんです。会場に行ったらもうなんだか、コーヒー産業の規模に圧倒されて・・・スケールがとても大きかった。そのあたりから、コーヒーについてもっと知りたいという知識欲がふつふつと湧いてきたんです。
何か検証してみたり、結果から考察してまた何かやってみたりするということが好きだったら、コーヒーの世界は魅力的ですよね。
そうなんです。もともと勉強は好きだし、知ることが好き。コーヒーのことを知っていくうちにバリスタになりたいという気持ちがかなり大きくなっていました。でも厳しい世界、仕事を掴むのも難しい、僕のような未経験者が簡単に入れる業界ではないと分かってはいました。なので簡単にバリスタやってみたい!と言えない・・・・でも気持ちはやりたい!だったんです。
日本だと求人が出ているお店に応募する、というのが一般的な流れだと思いますが、メルボルンでバリスタになりたいと思ったら、どうしたら良いのでしょう?
僕も初めジャパニーズレストランで働いていたんですが、バリスタになりたいと思ったのでまず、エスプレッソマシンがある環境に身を置きたいと思って探し始めました。
メルボルンでは日本のように求人情報を見て応募すると言う流れではなく、働きたい人が自分の履歴書をお店に配って回るんです。そしてそのお店で新しくスタッフを募集するという時に、採用担当の人が履歴書を見返す。そして気になる人がピックアップされて連絡がくるという流れなんです。この連絡も、”トライアルに来ないか”という内容で、その名の通り面接というより実践。
バリスタ職のトライアルは大きく2種類あります。1つは、その場で2種類のドリンクが指定されて、それを作るトライアル。2つ目はとりあえず3時間働いてみてと言われるトライアル。僕の場合は前者のパターンしかなかったです。
1種類ではなく2種類作るというところにポイントがありそうですね?
そうです。メルボルンでは1日に出るコーヒーの杯数が日本とは全然違う(めちゃめちゃ多い)ので、とにかくスピードと正確さが勝負。
ラテとフラットホワイトを注文されて、1杯ずつミルクをスチームしていたらそれだけでかなりの時間のロスになってしまうんです。ミルクのフロス(泡)の厚みが違うラテとフラットホワイトですが、大きなピッチャーで1度に2種類分のスチームミルクが作れるんです。トライアルではそれができるかどうかを見られます。
なるほど!では未経験の人はどこか練習できる場所を見つける必要があるということですか?
そうですね。お店や個人で開催しているレッスンに参加したり、語学学校にバリスタコースというのがあったりもします(実際に店舗で働いているわけではないので、経験にはカウントされないですが)。
僕も初めはエスプレッソマシンのあるお店で皿洗いの仕事をして、お店が終わったあとに練習させてもらっていましたね。
あと、トライアルの連絡が来たり、採用されるのはだいたいコーヒー業界に2年以上いる人なので、経験がなくてもありますと履歴書に書く人もいます。そうしないと連絡すら来ないので!
2年分・またはそれ以上の実力が伴っていればいいということですね。
まさにそうです。
グラインダーもエスプレッソマシンも、お店によって使っているメーカーや型式が違うので、トライアルを重ねて徐々にいろんな機械を知っていくというイメージです。数を重ねていくうちに知っているマシンに出会ったり、トライアルへの緊張感へも慣れてきます。初めは落ちて当然!
あとはトライアルさえ通れば日々ひたすら作り続けるだけ。本当にとても忙しいので、1,2ヶ月働けばスピードはどこでも通用するくらいになると思います。あとは自分がどうなりたいかに合わせて、また履歴書を持っていって・・・とキャリアアップしていく感じ。
山本さんもいろんなお店で働かれたんですか?
僕は5店舗くらいですね。メルボルンにもいろんなカフェがあります。向こうはラテ文化なので、扱っているのコーヒーはブレンド1種類というところも多いです。こだわっているところはフィルターコーヒー(ドリップコーヒー)や、シングルオリジンのエスプレッソがあるお店も。自分の場合、帰国前の最後はドリップもやっているお店で働いていました。
日本の人は優しいので、いま自分が辞めたら店が回らなくなる・・・と考えてしまいそうなところですが、ビザの期限は決まっています。どんどんステップアップしていかないとすぐに1年経っちゃいます・・・!
確かに・・慣れない環境で過ごす1年はあっという間な気がします。メルボルン時代は焙煎もやられていたんですか?
焙煎はレクチャーを受けた程度ですね。メルボルンでも有名な「マーケットレーンコーヒー」に、トシさんと言うクオリティコントロールをされている日本人の方がいるんです。レジェンドとも言うべき方で、その方からサンプルローストのレクチャーを受けたと言う感じです。
でも、ポップコーンメーカーで焙煎したことはあります!お遊びで!
ポップコーンメーカー!上からポコポコとポップコーンが出てくる、あれですか?!それはどこから発想を?
それです。よく見るその機械です。電源のオンとオフを切り替えながら温度調節して焼きましたね。
メルボルンでポップコーンメーカーを使って焙煎する大会があったのがきっかけで。僕は出場こそしてませんが、でもこの機械で焙煎ができるんだと知って面白そうだったので。向こうはいろんな大会があるんですよ・・。
大会に出始めたのはコーヒー業界に入ってどれくらい経ってからですか?
バリスタになり始めて1,2ヶ月くらいですね。初めて出たのは、"ORIGAMI CUP"という、ORIGAMIドリッパーを使って抽出する大会でした。現地で何かタイトルを取ったら日本へ帰ろうと決めていたのもあって、出られる大会には全部出ていましたね。
大会に出るのはとても良いと思います。初めて出た時もめちゃめちゃ楽しかったですし、何よりすごくコーヒーに向き合えるし、そのぶんみんながめちゃめちゃ伸びる。
自分も初めは舌に自信がなかったので、どうやったら美味しいと判断できるのか、抽出レシピを組む上で味をどう判断すればいいのかと悩み考えました。そして色々調べていくうちに濃度とか収率とか、知らないことをどんどん知っていくし、知らなかったことに気づけるんです。
あと、向こうでは仲間内で大会を開いたりすることもよくありました。日本人のバリスタが日本に帰るタイミングで、最後にお別れ大会を開こうみたいな。僕もそれにならって大会やりましたね!
メルボルンは色々なお店があるので、バリスタどうしの繋がりが広そうなイメージがありますが、実際はどうでしょう?
めちゃくちゃ繋がりありますね。どこもほとんどオープンな雰囲気なので。あとは毎日どこかしらでパブリックカッピングが開かれていました。いろんなバリスタが集まったりしますが、ライバルという感じは全然なかったです。オーナーとなるとわかりませんが、バリスタレベルだとみんなで盛り上げようと言う空気感でした。
山本さんは2019年の11月にマルゾッコ主催の大会で優勝されていますが、これはどんな大会だったんですか?
3人1組で出場する大会だったんですが、これはもう運動会みたいなものでした!(笑)
スタートと同時に課題のドリンクがずらっと発表されて、それを順番通りに早く正しく審査員(お客さま)へ提供する、という内容。抽出するエスプレッソに対しての条件(粉の量や抽出量・抽出タイムなど)も細かい決まりがある中で、使用するのはマルゾッコからリリースされたばかりの新しいマシン。マシンに関する知識や、条件通りにエスプレッソを抽出できるようにする調整力、チームでの連携力など、いかに日々のオペレーションを素早く正確にできるかという大会でした。
1回作り直しが出ちゃうともう勝ち進めないような緊張感がありました。あとは日常的に起こるイレギュラーなんかもあって。審査員にドリンクを持って行ったら、やっぱりテイクアウトのカップに移し替えてもらえる?と言われたり。ほんとに運動会状態でしたね(笑)
どんなチームが出場していたんでしょう?
メルボルンの有名なロースターから出場しているチームがいたり、シドニーからもエントリーしているチームがいましたね。僕たちは日本人3人でチームを作りました。
大会内容的に、同じお店で働くスタッフどうしでチームを組むと有利だったとは思いますが、お店から3人同時にスタッフが抜けちゃうとお店が回らないので・・・。でもどうしてもこの大会に出たかったので、いろんな人にお願いしまくった結果、チームを組むことができました!
あとはさすがに練習しないと・・だったので、、夜にカフェを借りて誰がどのポジションをやるか、誰がスチームするか、誰がショットを落とすか、誰がどこにハマるかみたいなのを1回練習しましたね。
大会のためのスペシャルチームですね!勝ち進む手応えはあったんでしょうか?
いや全然!エントリーしているチームを見たときにはむしろ無理だなと思いました。ちなみにこの大会は優勝すると、賞金のほかに1000ドルを好きな団体に寄付できるんです。僕たちは日本人だけでチームを組んでいたので、日本の団体に寄付しました。
賞金のほかに寄付もできる大会があるんですね。初めて聞きましたが、とても素敵な仕組みです!
この大会でタイトルを取ってすぐ、日本へ帰国されたんですか?
そうですね。ビザの期限には余裕があったんですが、早めに帰ってきました。
その後、準備期間を経て2021年に金沢でNonstop Coffee Stand & Roasteryのスタートとなっていますが、金沢は地元ですか?
いえ!地元は熊本です。金沢は旅行で来たことがあって、住みたいと思っていたんです。建物にしてもアートにしても、新しいものと古いものが混在していて面白くて魅力的でした。
お店を作る上で、もちろん地元も候補ではあったんですが、できれば浅煎り専門店がまだない地域でお店をやりたいという思いがありました。その点でも金沢は条件に合っていたんです。
個人的に”金沢のリトルメルボルンというワードがとてもキャッチーで印象的なのですが、お店のコンセプトである「メルボルンスタイル」というのは、どういったイメージなのでしょうか?
メルボルンを含め、オーストラリアは浅煎り・ラテ文化なので、エスプレッソ系ドリンクのカスタムがたくさんあるのが特徴ですね。ミルクが複種あるのはもちろん、エスプレッソの強弱やミルクの温度などなど。現地の人たちはそれぞれ自分好みのカスタマイズがある人がほとんどでしたね。
毎日のルーティンに自分好みのカスタマイズコーヒ・・・なんだかかっこいい感じがします。
お店にほぼ椅子がないのも珍しいスタイルですよね。大きい都市のコーヒーショップでもあまり見かけないかなと思います。
そうですよね。テイクアウト専門店ではないのにここまで椅子がないというのは、なかなか見ないスタイルだと思います。
コーヒーをワイングラスで提供されているのもとても特別感があって素敵だなあと思いました。
香りをぜひ楽しんで欲しくてこの提供スタイルにしてます。個性がはっきりしている豆を扱っているので、好みに合うかわからないけれど、普段と違う面白い体験ができるよ、というのもこだわりのひとつです。
目の前には美味しいコーヒーがあって、カウンターを挟んで山本さんがいらっしゃって、隣にはコーヒー好きのお客さんがいる・・・そんな空間にいると、話が止まらなくなりそうです。
お客さんと話すのがとにかく好きなので、このカウンターの対面スタイルもこだわりなんです。立ち飲み居酒屋みたいな感覚で、3時間くらい滞在されるお客さまもいらっしゃいます。僕も話すの好きだから止まんないんですよ。お皿洗いとかやりたいのにお客さんと話しちゃって・・・とかあります。(笑)
そんな感じで、お店が"コミュニティの場"みたいな使われ方をしていて、とても嬉しいんです。お客さんどうし距離感が近いので、立ち飲み屋さんで隣にいる人とふと話して仲良くなっちゃうみたいな感覚。いろんな人が集まっていろんな人の話を聞ける場所になっています。
山本さんのコーヒーへの探究心や情熱、もっと深く、という姿勢をとても強く感じるインタビューでした。
そんな山本さんがお店づくりをする上でこだわったものの一つが、最後に話に出ていたカウンターでの立ち飲みスタイル。
話すことが好きという山本さんが、カウンター越しにお客さまと語らい合える、
またそれだけでなく、コーヒーという共通言語を通してお客様どうしも繋がっていくようなお店づくりになっています。
コーヒーそのものが飲み物として持つ奥深さと、人との繋がりなどコーヒーがもたらす豊かさ。
この両方をぜひ Nonstop Coffee Stand & Roastery で体験してみてください。
お店に足を運ぶのはなかなか難しいという方も、オンラインショップでコーヒー豆を購入できます。
Nonstop Coffeeのコーヒーを飲む方に向けて頂いた言葉は「エンジョイ!」
気軽に、自由に、コーヒーを楽しんでみてください!
山本さんをゲストにお招きしたインスタライブの様子が
THE RELAY Instagram のアーカイブにございます。ぜひご覧ください!
GALLERY
shop & coffee images
INFORMATION
店舗名 | Nonstop Coffee Stand &Rosatery |
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住所 | 石川県金沢市東山2丁目6-2-3 |
WEB | |
営業時間 | 10:00-18:00 |
定休日 | Instagramにてご確認ください |
焙煎機 | Aollio Bullet |
豆の販売 | あり |